ESO > 書籍 > グリーンシェイドの伝承
――作者不詳の口承文学を聞き書きしたもの――
歌え、ヴァレンウッド。叫べ、「緑」よ
動く者、形を与える者の物語を語れ
その名はさまよえる王
彼の目は世界に向かって突き出し
知覚するもの全てに触れる
彼は思考によって、形を与える
果たして彼はどこにいるのか
山だろうか
森だろうか
否。そこに彼はいない
なぜなら、「そこ」とは場所であり、場所には際限がある
さまよえる王に際限はない
彼は宮廷にして玉座
彼は宮廷にして玉座
彼が歩めば、踏み出した足は自身の上に落ちる
彼の足音と地響きを、誰が聞かずにいられるだろう?
彼の到来とともに大地は震える
地下から彼のホロウがせりあがる
さざ波一つない水面の儚い静けさが
極小の石つぶてで粉々に砕けるごとく
さまよえる王が通り過ぎる時、恐るべき力が伝わる
叫べ、ブランブルブリーチよ! むせび泣くがいい、影の守人よ!
さまよえる王は味方にして敵
敵にして味方なり
彼の足音を、誰が記録にとどめられるだろう?
彼が口を開いて歌う時
誰がその旋律を耳にできるだろう?
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