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書籍

グリーンパクトとドミニオン

木々が太陽に向かって伸びるように、また、月が出ている夜は出ていない夜と違う鳥たちのさえずりが聞こえるように、ヴァレンウッド生まれのウッドエルフならば誰しも(そして、ヴァレンウッド生まれでないエルフのほとんど全てが)グリーンパクトについて知っている。

グリーンパクトとは我々ウッドエルフが、大いなる物語の始まりから我々を導き、生き方を教えてくれているイフレと交わした約束である。

グリーンパクトの定めは明快だ。森を傷つけてはならない。植物由来のものは一切口にしてはならない。食べるのは肉だけにせよ。敵を征服したときには、骸が土に還るに任せず、その肉を食らうべし。無駄な殺生はこれを禁ずる。汝らウッドエルフの姿は神聖なものゆえ、獣の姿をとってはならない。

これがグリーンパクトである。この協約を守る見返りに、森――我々は「緑」と呼ぶが――は充分な食べものと雨露をしのぐ住まいを提供してくれる。森が、我々の要請に応じて自ら姿を変えてくれるのである。これは、イフレが我々ウッドエルフだけにくれた特別な贈り物だ。おかげで、我々は満ち足りた暮らしを送ってきた。

ところが今、我々は未曽有の状況に置かれている。我々の新しい盟友たち、すなわちハイエルフとカジートは、グリーンパクトを守ろうとしない。彼らは草葉と木材でこしらえた家に住み、ありとあらゆる種類の果実を食べ、ブドウから造ったワインを飲む。敵を貪り食うなど、彼らから見れば野蛮人の所業以外の何ものでもないのだ。

こういった盟友たちを、ヴァレンウッドのウッドエルフはどのように受け入れたらよいだろうか? それも、グリーンパクトを遵守しつつ、だ。これは今日多くのエルフを悩ませている問題であり、とりわけ、新たに建設されたばかりの街マーブルクに住むエルフたちの困惑は深い。我々は「緑」に対する冒涜の度合いで言えば、もっと些細な事柄をめぐって戦争をしたこともある。

一方、ドミニオン成立当時、グリーンレディとシルヴェナールがウッドエルフの利益とグリーンパクトの精神を代弁してくれたことを我々は知っている。そして今、サルモールにはウッドハースの樹の従士にして我々の力強い代弁者であるファリエルがいることを、我々は忘れてはいないのだ。

彼らはこの不確かな時代に我々が模範とすべき指導者たちだ。彼らは自らの振る舞いを通して、我々にたどるべき道を示してくれている。我々は新しい盟友たちを、ウッドエルフならではの歓待で迎え入れるべきだ。彼らに喧嘩を吹っかけてはならない。彼らから盗みを働くような真似は、慎むべきだろう(彼らの多くは「窃盗の権利」というものを正しく理解していないのだが、それはまた別の機会に論ずる)。しかし同時に、我々は自分たちの利益、そして「緑」の利益を守るためにはっきりものを言うことを、ためらうべきではない。

樹の従士たるファリエルが力強い弁舌をふるってくれたおかげで、マーブルクで使う木材の多くと草葉の全ては他からヴァレンウッドに運び込まれた。一方、街を建設する場所を作るためにおびただしい数の樹木が切り倒されなければならなかったという事実は、多くのウッドエルフにとって許しがたいことだ。ただ、ファリエルの見るところ、新たな盟友たちを受け入れることは、ヴァレンウッドを破壊するに違いない連中に対する強力な防備を構築するための第一歩なのである。

我々の意見に進んで耳を傾けようというアイレン女王の姿勢は、彼女が優れた知性の持ち主であることと、彼女がウッドエルフの民に敬意を抱いていることを示している。であれば、我々は女王の指導力を積極的に信頼することで、彼女の厚意に報いるべきであろう。

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