書籍

夢中の歩み

1000年以上もの間、ヴァルミーナの司祭は錬金術の達人である。
彼らの混合剤の複雑さと効用は、まさに伝説にほかならない。
このような錬金術の秘宝は非常に人気があり、闇市に出回る水薬1つが大金を生むこともある。

現在知られている数多くの薬の中でも、おそらくヴァルミーナの不活性薬が1番素晴らしいだろう。
この粘着性のある液体を一滴飲むだけで、「夢中の歩み」として知られる状態に陥る。
使用者は他人の夢を、まるで自分がそこに入り込んだかのように体験できるのである。
対象者は最初から居たかのように夢の世界に溶け込み、夢の重要な一部になる。
夢の中に登場する人々からは、使用者のほうが夢を見ている人だと思われるだろう。
使用者は、自分の癖や話し方、適切に広がった知識さえも目にするはずだ。

観察者の目には、薬を飲んだ使用者の姿が消えてしまうようだ。
対象者が夢の中で行ったり来たり歩くとき、観察者たちもまた実際の世界を行ったり来たり移動する。
不活性薬の効き目が切れると、対象者の姿は再び見えるようになり、夢の中でいた場所とまったく同じ場所に出現する。
わずか数フィートしか動かなかった対象者もいるし、ほんの数分で元の場所から数千マイルも離れた場所に現れた者もいる。

注意すべきこととして、夢中の歩みは非常に危険で対象者に様々な潜在的危険を与えることだ。
ある夢では、対象者は病気や、暴行そして死のような生命を脅かす状況にさらされた。
ほとんどの場合は傷を負うことなく現実の世界に戻って来れるが、場合によっては対象者は帰ってこずに薬の効き目が切れたと見なされるか、死亡した状態で現れる。
現実世界においては危険で有害な場所に戻ってきてしまうことも多い。
たとえ夢中の歩みの中では、そこが安全な場所であったとしてもだ。

ヴァルミーナの不活性薬は、それを作り出す錬金術師のように不思議でとらえ所がないものである。
この独特の移動装置が不活性薬自体の効果なのか、単にヴァルミーナの奇妙な企みなのか定かではない。
しかし、通り抜けられるはずのない障害物を通リ抜ける夢中の歩みの効果は、確実にその不思議な性質によるものである。

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