ウェイレストの年代記編者、ゼフリン・フレイ著
ロスガーへの旅は思っていたよりも愉快なものになった。
クログは陽気で快活な道連れであり続けた。
それどころか、生まれ故郷に近づくにつれ、ますます上機嫌になっていった。
道々、多くのことを語り合った。
その中には抑圧的で厳格な民族の伝統の一部を変革するというクログの夢も含まれていた。
「大きな都市をいくつも作るんだ。多種族が暮らし、教育と文化の施設も用意する」とクログは言った。
「そして料理だ。とにかくいっぱい料理を呼び込む。ただの食い物よりずっといい」
ついにロスガーへの国境を越えると、クログの仲間のオークたちは沈鬱で深刻な面持ちになった。
彼らはクログに味方し、族長に刃向かうことの意味を承知しており、それがもたらす結果を覚悟していた。
だが、それでも、破滅の可能性への行軍が気楽なものであるはずがなかった。
一方、クログは快活さを保ったままで、むしろ子供のようにはしゃぎ続けていた。
彼はこの時のために一生を捧げてきたのだ。
そして運命にまっしぐらに突き進んで行く覚悟ができていた。
彼のことが心配ではあったが、彼を友と呼べることが誇らしくもあった。
そして、大胆なことではあるけれども、クログが誇らしげに馬に乗っている姿を見るだけで胸が高鳴るのを感じた。
私はこのカリスマにあふれたオークの戦士に、多少は心を奪われていたのだろう。
ある時点で、クログは私の視線に気づいたようだ。
オークらしい魅力的な笑顔を見せ、ウィンクをすると「族長になったら、妻の一人に加えてやろう。答えはいつでも構わん」と言った。
私は顔をそむけた。
赤面してしまったのに気づかれていないことを祈った。
この馬鹿げた申し出を笑ってよいのか、激怒して叫ぶべきなのか分からなかった。
しかし考えがまとまって話をつけようとしたときには、クログは籠手をつけた手を上げていた。
「ここからは、」彼は言った「一人で行く」
ボラズガー族長はクログを待ち受けていた。
オークの巨漢戦士4人が族長につき従い、怒りに燃えた目でクログを睨み据えていた。
その後ろには、クラン全員と思われる人々がこれから起こることを見届けにきていた。
「族長にひれ伏して許しを乞う気か、クログ?」ボラズガーが嘲った。
「いや、今日はよしとく、」クログは陽気に答えた。
「今日はクランの支配権を賭けて挑戦しにきた」
遠くからでもボラズガー族長が憤怒に身を震わせているのが見て取れた。
「無礼者めが」族長は叫んだ。
「公平な勝負で俺に勝てると思っているのか? ええ?」
クログは肩をすくめた。
「正直言って、勝てると思ってる。あんたは太り、弱くなった。一方、俺は遠い国々で戦を続けてきた」
クログが言い放った。
「実際、この戦いのどこが公平なのか分からない」
憎悪の塊を叫びに変え、ボラズガーは武器を抜き、突っかけた。
まったく対照的に、クログは静かに剣を鞘から抜き、構えた。
そして無駄のない動きで族長の力任せの一撃を受けると、強烈な一太刀を見舞った。
ボラズガーの頭は三度跳ね、その選り抜きの衛兵のブーツに当たって止まった。
場は長い間静まり返っていた。
そして最初の声が上がった、「クログ族長万歳」
残りの人々もこの声に続き、順番に強大なクログの前に片膝をついた。
彼は微笑んだ。
「今日はオーシマーの新たな始まりだ!」クログが宣言した。
「お前たちを栄光へと導こう! 誓ってもいい!」
彼の言葉を信じたのが、私だけでないことは明らかだった。
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