魔術師ギルドの高名なる歴史家フィランディルの旅行記より
我々は日が暮れる直前、アイレイド遺跡の外周部に到着した。中に入って仕事を始めたかったが、チームの中でも若手である私の提案は無視された。なのでテントを張って間に合わせの小屋を作り、我ら寄せ集めのキャラバンをこの任務にふさわしい野営地へと変えようと苦心した。
この冒険に選ばれたことは大きな名誉だ。ギルドの幹部に混じって有名なハートランド・エルフの遺跡探検をするよう依頼を受ける者は多くないのだから! 私は準備のため、何日もかけて夜通し過去の遠征の文書や報告を読み漁った。日が出るまで待つなんて、拷問みたいなものだ。トログライ魔道師が勧めたようにしっかりと休息を取ったりせず、自分だけで暗闇に潜り込んで行ったのは当然のことだろう。
魔術の光とメモ帳、水袋を持って、私は遺跡の奥へと進んでいった。どれだけ長く歩いたかはわからない。この灰がかった白の広間では、時間など無意味なように思われた。あっという間に、夜明けがアイレイド遺跡の紋章とアーチの上に姿を現した。
キャンプでは私がいなくなったことで何らかの警戒が呼びかけられたらしく、私の名を呼ぶ声と、辺りを探し回る騒音が聞こえてきた。トログライ魔道師は私の安全に懸念を抱いていた。心配していたと言ってもいいかもしれない。だが言い訳しようにも見せるべきものがない私は、見つかるわけにいかなかった。私は仲間の魔術師たちの音から遠ざかった。その時あれが起きた。
何かが私の目を捉えた。確認するために振り返ったが、見えたのは壁だけだった。この石と漆喰の集積が、遺跡内部の他の壁と異なっていると示唆するようなものは何もなかった。
その時彼らに見つかった。極限まで集中して壁を見つめていたところをだ。トログライ魔道師はどうして私の注意を捉えたものを理解したのだろう。彼女は私に安全性の問題と、夜はキャンプに留まることについて説教をする代わりに、ある石を押した。石は彼女の手の下で動き、手つかずの遺跡深部へと続く階段を明らかにした。
この時はわからなかったが、このような奇妙なことが私に起きるのはこれが最初ではなかったのだ。これが私の歴史家としての比類なき地位の始まりだったかもしれない。他の者には見つけられないものを見つける力により、私は魔術師ギルド内部での成功を勝ち取ったのである。
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