エーケンは死んだ。一緒に育ち、砂漠を走って競争して、剣に見立てた棒で遊び、何年も他人の戦争で戦って金を稼いだ。盾の衛兵の仕事に落ち着いた時、少し早く引退したように感じた。
ドラゴンが来るまでは。
いつものようにパトロールをしていた。恐ろしい鳥は繁殖の季節だったから、明らかに怒りっぽくなっていた。だが、エーケンにはアルゴニアンから習った技があった。乾燥したヒョウタンにいくつか穴を開けて、長い紐に結ぶ。馬鹿な真似はよせ、と言ったんだが。彼がそいつを頭の上で回すと、ジャッカルの群れのような音が出た。鳥たちは逃げていった。
いい考えだな、と彼に言ったことはなかった。馬鹿だったよ。いい考えだった、だが…
エーケン、お前はバカ野郎だ。そいつでドラゴンを追い払うなんて、無理に決まっているだろう。ドラゴンはあいつを一口で飲み込んだ。何もできず、あいつの叫び声を聴きながら漏らすしかなかった。
私は逃げた。すまない、エーケン。私は臆病者だ。
あいにく、誰にも許しては貰えなかった。ジャッガの瓶の底にも、ショーンホルムの安いワインの底にも、スクゥーマのゴミにもなかった。二日酔いと砂糖小屋が残るだけだ。喉が髪の毛に覆われているような気分になる。代わりに神を頼れば、司祭たちはつまらない説教をするだけだ。これは神々の意志であり、救いは祈りの中にしかない、とかな。
実にくだらん。あいつらには何も分かっちゃいない。
エーケン、何とかしてやる。お前を守るはずだったのに、いざという時に何もできなかった。私は忌々しい人食いウッドエルフに指を食われながら素手で絞め殺し、素早いウェアウルフにも追いついた。だが、あのドラゴンに会った時、初めて怖気づいた。
遠くでドラゴンが飛んでいるのを見た。何時間も輪を描いて飛んでいる。私がここにいると分かっているんだろう。復讐をするつもりはないが、少なくとも我々の父の幽霊は、この臆病者を死ぬまで呪いはしないだろう。
愛していたぞ、兄弟。もうすぐ会いにいく。
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