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書籍

サラディンの日記

上級王デュラクの娘、サラディンの日記より

父とヴィルマリルはもう1日、夜のほとんど時間をスカイリーチの地下にあるカタコンベで過ごした。
彼らはあの暗黒の技に対する陶酔を分かち合っているけれど、私は時々彼らの友情は複雑すぎないかと思う。
父はネードの上級王としてあのような重責を担っているけれど、ヴィルマリルに助言を求める度、その重責をほんの少し私の愛する人に負わせているのではないかと心配している。

* * *

今の所、父には私達のことを話していない。
でも、ヴィルマリルはごく近い将来、父に私との結婚を願い出てくれると約束してくれた。

* * *

父は激怒した。
ヴィルマリルとの長い友情にもかかわらず、愛する娘がハイエルフと結婚するという発想には全く喜ばなかった。
私はとても傷ついたけれど、強くあらねばならない。
どうしたって私は上級王の娘なのだし、父や国民に対する義務がある。
この結末がどれだけ私を苦しめたって関係ない。
そして、かわいそうなヴィルマリル。
私は見たことがないわ、あんな…打ち砕かれたような彼を。

* * *

私はケスティク王と結婚する。
父がケスティクと北部のクランとの結びつきを強化するためにこの結婚をお膳立てした。
私はまだとても強くヴィルマリルのことを思っているけれど、それは後ろに追いやらなければいけない。
私達の愛は禁じられたものだし、この結婚はネードのクランをより強くする。
ヴィルマリルはもう、彼自身の人生を歩み始めているの?

* * *

野蛮なヨクダ人達が扉のところに集まっている。
今日は父とヴィルマリルが一緒にいるのを見た。
2人とも不安げに見えた。
ああ、2人ともそれは見せないようにしているけれど、私は2人をよく知っている。
ヴィルマリルが侵入者を撃退する計画があると言う。
彼は父がその案を支援してくれるだろうと思っている。
彼らに必要なのは、ただ他のネードの王を説得することだわ。

* * *

ヴィルマリルは今夜の祝宴の間中私を見ていた。
かつては見られなかった…渇望が彼の瞳の中にあった。
きっと私が想像しているだけね。
けれど、今夜のヴィルマリルの頭の中には侵入者や、軍隊や、戦争のことはなかったと断言できる。
彼は私のことだけを見ていた。

* * *

ヴィルマリルは王家の部屋にいる私のところへやって来た。
最初は、彼と話すことをためらったけれど、距離を置いているとは思われたくなかった。
彼はまだ私を愛していると言った。
共に逃げ出そうと頼んできた。
彼が冗談を言っていると思い込んで、その考えを笑いとばした。
けれど、私にはわかった。
彼の瞳の中の、私への思いは今までにないくらい強いものだった。
私は、私の思いが私を裏切る前に、後ろを向いた。

* * *

今日のヴィルマリルは冷たく、よそよそしかった。
ご機嫌を尋ねたとき、彼はただ、私が次の行動の方向を決心させるのを手助けした、とだけ言った。
王の議会が終わったらすぐにヴィルマリルを見つけて謝らなければ。
決して傷つけるつもりではなかった。

間違いなく、彼はわかってくれるはずよ。

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