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書籍

魔術師ギルドの沿革

(ヴァレニア版)

アークメイジ・サラルス著

第二紀の初頭において、魔術師、妖術師および各種の秘術師たちが研究と公的福祉のために才能と糧を結集させるという発想は革新的なものであり、目的および構造の面で今日の魔術師ギルドに近いといえた当時の唯一の組織は、アルテウム島のサイジック会であった。当時、魔術とは個人、もしくは小数の同好の士で学ぶべきものとされており、魔術師は隠者とまではいかないものの、大抵は非常に孤高の存在だったのである。

サイジック会はサマーセット諸島の支配者たちに助言役として仕え、部外者には理解できない複雑な儀式によってその構成員を選抜していた。組織としての存在意義や目的が公示されることもなく、彼らを非難する者たちはサイジック会の力の根源をあらゆる邪悪な要素に結びつけようとした。サイジック会の宗教は祖先崇拝といえるものであったが、この類の教義は第二紀には徐々に時代遅れと見なされつつあった。

アルテウム島のサイジックの一人であり、かの有名なイアケシスの弟子であったヴァヌス・ガレリオンがサマーセット諸島中から魔術師を集め始めた時、誰もが彼の行いに反感を抱いたという。彼はファーストホールドの街中を拠点としていたが、これが魔術の実験は住民の少ない地域でのみ行うべきとする(ある程度根拠のある)考え方に反していたのである。さらに衝撃的であったのは、ガレリオンが費用さえ払えば一般市民の誰もが魔術品、秘薬、そして呪文でさえも利用できるようにすると申し出たことであった。これは魔術が貴族階級や知識階級の特権ではなくなることを意味していたのである。

ガレリオンはイアケシスおよびファーストホールドの王、ライリスXII世の前に召喚され、作りつつあった組織の意図を問いただされた。ガレリオンがライリス王とイアケシスに対して行った演説が後世のために記録されていなかったのは悲劇に違いないが、ガレリオンが今や全土に広がったこの組織を創設するためにどのような虚構や説得を用いたのかについて歴史家たちが空論を戦わせる題材にはなっているようだ。いずれにせよ、ガレリオンの組織は認可されたのである。

ギルド創設から間も無くして、保安面の懸念が生じた。アルテウム島は侵略者から自らを守るのに武力を必要としていなかった。サイジック会が何者かの上陸を阻止すべきと判断した場合、島およびその全住民がこの世から姿を消してしまうだけのことだったのである。これに対し、新たにできた魔術師ギルドは番兵を雇わざるを得なかった。ガレリオンはすぐに、タムリエルの貴族階級が何千年もの間思い知ってきた、金だけでは忠誠は買えないという事実を知らされることになる。次の年にはランプ騎士団が結成された。

ドングリから木が育つかのように、サマーセット諸島の各地に魔術師ギルドの支部ができ、やがてタムリエル本土にも進出していった。迷信ゆえか妥当な懸念ゆえか、魔術師ギルドを領土内で御法度とした領主の記録も数多くあるが、その次の代もしくは次の次の代くらいまでには魔術師ギルドに自由を認めてやることの利点が浸透した。魔術師ギルドはタムリエルにおいて強大な一派となり、味方としてはどこか無関心ながら、敵にまわすと手強い存在になっていたのである。魔術師ギルドが実際に地元の政争に関わるのは稀であったものの、一部の例外的な案件においては魔術師ギルドの関与が最終的な顛末を決定づけることになっている。

ヴァヌス・ガレリオンによる創設以来、組織としての魔術師ギルドはアークマギスター六名からなる評議会によって統制されている。各ギルドホールは賢者により運営され、遺物師と武芸の長の二名がこれを補佐する。武芸の長はランプ騎士団の支部長を兼ねる。

魔術師ギルドの一員でなくとも、この複雑に構築された階級制度が時に絵空事でしかなくなることは想像がつくであろう。タムリエルを離れてあの世へ向かう際にヴァヌス・ガレリオン自身が苦く言っていた。「ギルドは奇妙に入り組んだ、政治的な内紛に過ぎなくなった」のだ。

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