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書籍

マッドクラブのモリス

ガレンの潮だまりにモリスというマッドクラブが住んでいた。
誰も関わりたがらない、気難しい蟹だった。
彼は6まで数えることができた、脚1本につき1つ
そしてシャウラスの卵の色をした、自分の殻を誇りにしていた

大きな恐ろしい爪で、彼は小さい動物に命令した
シースラグや魚、水面を走るものに
爪を打ち鳴らして、彼はこうしろああしろと命じた
そして言い返す者がいたら、彼は叩き潰してしまった

「ウニやヒトデや、その他の雑魚どもよ
この仕事をやらなければ、すぐさま放り出すぞ!
そこの海草を片づけろ、その真珠を磨け
そこのフジツボを削り取って、投げ捨ててしまえ!」

動物たちは全員従い、仕事をすべてやった
海辺に投げ捨てられないようにするためにはそれしかなかった
海辺は乾いて不愉快な場所、拾い上げられて食べられるだけ
厳しく働くか、誰かのシーフードになるかだった

ほとんどのマッドクラブは宗教なんて言葉を知らないが
彼らが働いている間、モリスは内面に深く目を向けた
彼は塩水に浸った心の中に、愛と似ていなくもない温かみを感じた
そして大きな蟹が空の上から見守っていると考えた

彼は石でできた大きな爪を持つ蟹を思い描いた
自分の殻と似たような、明るく輝く殻を持ち
それから名前も! そう、名前だ! 重要な蟹には名前がある
ゾリスとかゴリスとか、そういう名前が

大きな蟹が見たらどんなに素晴らしいことだろう
モリスが海のこの部分を手懐けたことを
この潮だまりは彼のもの、すべては美しく秩序だっている
どの表面も手入れされ、完璧に磨かれている

するとモリスのささやかな家の上に影が立ち上る
泡を突き抜けてブーツの底が現れる
そのわずかな一瞬だけ、彼はあの方が来たと思った
お空の大きな蟹が、一泳ぎするために降りてきた!

だがそれはゾリスでもゴリスでもなく、名のあるどんな神でもなかった
ジャンヌとかいう名前の、ただの若い船乗りだった
彼女は無頓着に潮だまりを駆け抜け
足を置く場所なんて気にもかけなかった

そして船乗りはやって来たと思ったらいなくなり
動物たちはがっかりしたかと思うだろう
彼らは泣き、肩をすくめてため息をついたかもしれない
マッドクラブのモリスが死んだ哀しみのせいで

でも潮だまりは静かになって、誰も命令しなくなった
海草が絡まっても、伸びすぎても誰も気にしない
フジツボが居座って、真珠がくすんだからどうだって?
誰も通りすがりのカモメに放り投げられるのを怖れなくてもよくなった

だから誰も汚れに文句を言わなくなった
潮だまりには活気が戻ってきた、シースラグとその粘液も戻ってきた
海草たちもすくすくと伸びた
今じゃフジツボの家族も、モリスという殻に住み着いた

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