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書籍

夢見の館: 歴史

候補者のための入門書
夢見の館の公文書保管人クィル著

サマーセットで最高の演者の故郷、夢見の館へようこそ! 君たちは、名声や富を求めて訪れたのかもしれない。あるいは純粋な好奇心や所属への欲求だろうか。いずれにせよ、崇高な一座に加わらんと大がかりなオーディションに参加する前に、規律を理解してもらう。あらゆる壮大な劇と同じく、何事にも序幕はあるのだ。

夢見の館を創設したのは、高貴な意図と莫大な財産を持ったハイエルフだ。イングレス団長は、大変な先見性と途方もない財産を持つ指導者であり、壮大な物語の幕を開いてくれた。その名誉を讃える劇、詩、歌は数多くあれど、いずれも演技という芸術への献身と情熱を語るものだ。ただし、初代団長の献身は、新たな劇を作ろうとする意欲よりも、旧い劇への嫌悪から生まれた。

彼女は団長になる前、熱い情熱を持つが平凡なエルフだった。演技に注ぐ愛は、父親が育んだとされる。壮大な古典から余興としての簡単なジャグリングまで、あらゆる芸術を歓迎した。そう。経歴のない者から一流のスターまで、あらゆる仲間の演技に共感を抱いたのだ。そして、一時は幸せだった。

悲しいかな、彼女は年齢を重ね、物事の裏も見えるようになった。仲間の演技に目を凝らすと、この職業を真に愛している者はごく少数だった。エルフたちが芸術を踏み台にしていることに気付き始めたのだ。それはやがて悪名と権力につながる道だった。最高位に昇格し、特権と名声を掴むための道だ。気の合う者との出会いが減るにつれ、その哀れな魂は孤独になった。間もなく演劇から身を引いたが、それはひどく心を痛める体験だった。

この孤独な期間に、彼女はこの悲しい潮流を変えようと思いを巡らした。変化を起こそうとして、思いもつかないことをした。自らの名を捨て去り、過去の自分を焼き払ったのだ。彼女はイングレス団長として灰より蘇り、同じ志を持つ仲間の一座を作ろうと誓った。こうして夢見の館は誕生した。

一座の全員は、己の情熱のみに生きることになっていた。イングレス団長はこの誓いを忘れないため、演者はみな仮面を付け、名を新たにすると宣言した。彼らが身元を明かすことはなかった。多くの仲間の演者から幸せと楽しみを奪ったのは、他ならぬ名声なのだから。夢見の館に加わった者は、パフォーマンスのスリルに対する愛情だけに従った。演者たちが唯一求めたのは、聴衆の鳴り響く拍手だけだったのである。

では、自分が何に成りたいのか見極めよう。ここの戸口を訪れたのは、名声や富を求めてのことか。もしくは利己的な鎖を捨て去り、芸術に生きる覚悟はあるか? 参加の意志があるなら、知っておくといい。君は君でなくなる。より明るく美しいものになる。千の仮面を付けても、素顔を見せることはない。

君は、仮面をつけるか?

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