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書籍

夢見の館: オーディション

候補者のための入門書
夢見の館の公文書保管人クィル著

では、夢見の館に加わりたいのだな? 残念ながら、入会するには決意を単に表明するとか、いくらか会費を払うような簡単なこと以上のものが必要だ。教化には長い手順がある。しかし、君はもうセリフを覚えて自分のパートを歌ったな? 剣を呑む勇ましい才能であれ、複雑な踊りであれ、技術に磨きをかけたはずだ。それでは、オーディションの話をしよう。

数週間程度の公開オーディションは、季節ごとに開かれる。勇気を出してステージに立ち、その才能で驚かせてくれればいい! 見事なパフォーマンスが終われば、一座の演者が君に話しかけ、候補者に相応しいかどうかを伝える。候補者になれなくても、次の季節に頑張れ!

さて、候補者になったことを過大評価してはならない。候補者になれば技術に磨きをかけ、一流の者から学ぶために仮面の館への立ち入りが許される。君だけの仮面と名前を授けもする。ただ、夢見の館に加わったことにはならない。これは初めの一歩にすぎない。候補者は、最終オーディションを通過しなくてはならない。

これは大変な旅ではあるだろうが、孤独な旅ではない。師が候補者全員を導く。一座の古参の助けを受けて、とても重要な最終オーディションに準備をするのだ。この師は知識の泉の役を担い、君はその水を飲む。彼らの言葉を心に留め、模範とするがいい。一座に入るには師が鍵だ。手順を学び、言葉を覚えるだけでは不十分である。真の芸術家の情熱を、心に燃やす必要がある。師は火を灯せるが、それを業火に煽れるかどうかは君次第だ。

この期間、他の候補者は永遠の仲間となる。積極的に手助けをするのだ! 間もなく共に演者となるのは、彼らかもしれないのだから。恐怖や嫉妬で敵意に沈んではならない。争う枠は1つではない。全ての候補者が合格した季節もあれば、全員が落選した時もある。最終オーディションの期間は、己が才能のみを頼らなくてはならない。他人のミスに頼ることなく、自分のミスに気をつけよう。

仲間の候補者と仲良くなることは推奨するが、君自身の姿が以前とは異なることを忘れないように。常に仮面をつけ、過去の名を語ってはならない。これは訓練の始まりだ。一座の現役の一員のように行動しなくてはならない。秘密を抱えた興味深い生活を始めるのだ。過去の名前を知るのは自分と、師と、団長のみだ。その後は忘れ去られるべきなのだ。

最終オーディションは思ったよりも早くやってくる。陽気なサーカスの座長であり、壮大な交響曲の指揮者であり、夢見の戯曲の演出家である団長の前に立つのだ。君の命運は団長が決める。

最後のパフォーマンスにはこれまで示した技の表現を至高にまで高めた、誉れ高く夢のような水準が求められる。全力を注げ。君が一座に入る準備ができているかどうかは、その時に分かる。名前、家族、過去の生を捨て去り、夢見の館の一員として加われるかどうかは、その時にようやくわかる。

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