タムリエルの主要な文化様式に関する小論集のための、アルフィディア・ルプス博士による覚え書き
(ルプス博士は帝国公認の民族誌学者として、第二紀418年~431年にかけて最高顧問サヴィリエン・チョラックに仕えた)
今朝モリアンの住まいを訪ねると、前日のことが嘘のように何もかも普段通りだった。ディヴァイスと教授はまるで親友同士のように、チャルを注いだマグカップを片手におしゃべりに興じていた。話題はラリバラーの「11の儀式形態」と「最も神秘的盟約の本」の比較だ。私はディヴァイスに、商業地区のヨクダの礼拝堂に連れていってくれる約束はどうなったかと訊ねた。モリアンはかすかに眉を曇らせたが、それでも笑顔をつくり、自分は研究室で新しい超苦悶媒体をテストしたいから、かえって好都合だと言ってくれた。
(それと、おそらく光の加減だと思うが、私の目には二人ともなんだか… 若やいで見えた。どちらも高い能力を持つ魔術師であり、おそらくは幻惑魔法にも通じているだろうから、その点を忘れないようにしなければ。たんに私がのぼせあがっているだけかもしれないが)。
礼拝堂では博識なレッドガード数人と会ったが、全員が全員、例の威厳と奥ゆかしさをそなえていた。私が見たところ、それらはレッドガードの中でも高い教育を受けた人々に特有の資質だ。トゥワッカの司祭であるジルミル大司祭(つづりが間違っていないことを祈る)はとりわけ協力的だった。
大司祭が指摘したのは、レッドガードの故郷であるヨクダにしろ、彼らの現在の本拠地であるハンマーフェルにしろ、どちらも砂漠だ(ヨクダについては、砂漠「だった」と言うべきか)という点だ。涼しく過ごすため、また厳しい日差しや強い風から身を守るため、レッドガードの衣服はおのずと軽いうえ、丈が長く、ゆったりとしたつくりになる。そしてその流れるような曲線が、彼らの作る芸術作品や工芸品のデザインに持ち込まれているのである。彼らの着るローブや鎧は、関節部と頭部に曲線状の膨らみでアクセントを添えることが少なくない。剣でさえ、やもすると曲線を描く。
対照的に、彼らの建築物はどちらかというと重厚な印象だが、よく見ると、それは主として砂漠の極端な気温を遮断するためのものだと分かる。ジルミル大司祭は礼拝堂の優れたシステムを見せてくれた。かすかな風をも逃さず身廊に送り込むため、明かり層に「よろい張り」を施した換気ダクトが設けられているのである。
ジルミル大司祭が受け持ちの信徒団の相手をするために呼ばれて行ってしまうと、ディヴァイスと私はヨクダの神々を祀った8つの祠を眺めようと、ぶらぶら後陣に入っていった。ディヴァイスによれば、ハンマーフェルのフォアベアーがレマン帝国によってもたらされたシロディールの神々を崇めることが少なくないのに対して、より保守的なクラウン・レッドガードはこうした伝統的な神々を崇拝するのだという。そんなうんちくを傾けていたディヴァイスだったが、モルワを祀った蜂の巣状の祠の後ろで不意に向きなおり、例の燃えるように赤い眼で見つめながら、私の手を取るや、だしぬけに、あなたはこの帝都で誰よりも聡明で素敵な女性だと言った。私は息を飲んだ。心臓が早鐘のように打っている。ところが、彼が私を抱きしめるようなそぶりを見せた瞬間、私は急に怖くなった。私は後ずさりをし、かぶりを振ると、身をひるがえして身廊に駆け込んだ。モルワの祭壇に蝋燭を立てていたレッドガードの子供たちを、ずいぶん驚かせてしまったと思う。
どうしよう? ディヴァイスをひどく侮辱してしまったに違いない。どうしたらこの埋め合わせができるだろう? それと、モリアンには話すべきだろうか? ああ、ジュリアノスの小さな茶瓶にかけて、なんというジレンマだろう!
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