装具商兼職人、カッシア・ハイリエル著
我々の任務は単純だ。火炎魔術師エンクラティスは我々の密偵が侵入し、標的を抹殺することを可能にする装備を要求している。ご推察どおり、火炎魔術師はトゥルースウォーンがその場にいた証拠を消し去る際、屋敷全体を焼き払う方法を好ましく思うだろう。そのため、私は結果として生じる猛火から身を守る鎧をデザインした。デザインの中には新しい武器の計画があることもわかるだろう。我々が求める品には大きな価値がある。また、獲得するのは我々だけでなくてはならない。正しく武装すれば確実に結果を出し、計画を前進させられる。
兜
このデザインについては自分の才気を認めよう。匿名性の向上と防護のためにグアル革の仮面が顔全体を覆っている。ただし、彼らが遭遇する炎のまぶしさを回避するために琥珀のレンズも付け加えた。レンズは多少周囲の視野を制限するが、払う価値のある犠牲だろう。
肩防具
大抵の場合は可能な限りの柔軟性を維持するため、革のポールドロンを選ぶ。必要以上に重量をかけるべきではない。装飾はあくまでも地味にしてある。トゥルースウォーンに忠義の誇示など無用だ。
胸当て
任務中に姿を隠し続ける能力を向上させるため、この装備には暗い色調を選択した。胸のダークブラウンの革はとても柔軟性が高い。重鎧でさえ。接合部のディープブルーの布は機動性を高める。厚い布が胸と首を覆い、空中をただよう燃え殻から身を守る。
手袋
この鎧には完全に腕を覆う手袋が不可欠だ。まだ火炎魔術師の技を体験していないなら、彼が驚くほど強烈な熱の創出に優れていることを知っておくべきだろう。密偵が標的を追い求めている間、手をその危険な熱に晒すわけにはいかない。
ベルト
猛火の中でゆったりとした服を身に着けるのは明らかに理想的でない。ひらひらとしたチュニックのせいで引火するなど愚の骨頂だ。この硬い革のベルトを締めて自分の身を守るのだ。腰周りには持ち運びに使える輪を付け加えたので、発火用の薬剤を容易に取り付けられる。
脚当て
警告しているにも関わらず、魔法を使用する密偵は足回りに余裕がある服装に固執する。それが彼らの流儀なのだ。だからできる限り受け入れることにした。重い布を使い、風を受けて膨らまないよう裾の周囲に重量がかかるようにした。より実用性のある脚当ては柔軟な革を使い、場合によっては濃い色の鋼で覆われている。
ブーツ
密偵には任務を達成するための速度と同時に、邸宅内にいる輩を避けるための隠密性が要求される。提供したブーツは熱の影響を受けない、厚みのあるグアル革で作られている。靴底の内張りにはどんなに熱い状態でも溶けない、私独自の調合薬を使っている。
盾
後援者から譲り受けた本を参考にした古典的なデザインだ。元々は第一紀のものだろう。重いリベットで縁を囲んだラウンドシールドは、携帯性を保ちながらも最高の強度と防御性能を提供する。任務中の密偵の速度を落とすような真似はしたくない。
短剣
武器のデザインでは簡素かつ上品であることを目標としている。頼りない短剣でさえもその感覚を維持している。刃には私のデザインによる優雅な図案のエッチングを施した。柄と鍔は強度を持たせるため、青銅で覆われている。
剣
現代の剣をデザインする者の多くが仰々しい模様の柄や刃を好む。これは馬鹿げていると思う。簡素で強い武器はどんな奇抜な外見にも負けないほどの恐怖心を生じさせる。それ故、刃に文様を刻み込む際には慎重になる。このシンボルは後援者からもたらされたものであるため、手を加えてはならないと言われている。
斧
炎が猛威を振るい邸宅を焼き尽くす時は、落下して退路を塞ぐがれきに遭遇するだろう。斧を形作っているこの厚い鉄と強度のある青銅は、どんな木材も切り裂いて通れるようにしてくれる。刃自体は下部の端に沿って先端が鋭くなり、鎧をも叩き割る能力をもたらす。
戦棍
私はそのバランスの良さにより、双頭の戦棍のデザインがことのほか気に入っている。加えて、激しい戦闘中にダメージを二重に与えられる可能性があれば生存性が向上する。先端と柄には我々が所持する鋼の中でもっとも厚みのあるものを使用している。圧力を受けて折れることなど、決して許されない。
杖
多くの杖の使用者が木の杖を好むが、この場合は明白な理由により木材が使い物にならない。青銅で覆われた鋼が杖の芯を形成し、握りやすいよう中心に沿ってエッチングが施されている。先端はほぼ三叉槍のような形状で尖っている。これは実用的だ。使用者が通路から燃える物質を除去する必要がある時、フォークのような形状が役に立つだろう。
弓
握りの部分が鋼で補強されている湾曲したアッシュ材は、射手に柔軟性と強度をもたらす。木材を舐める火炎には注意が必要だ。矢筒はより多くの発火剤を持ち運ぶことが可能になっている。これで火矢の作成が容易になるはずだ。
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