ここに書かれているのはインドリル商船、恐れ知らずのグアル号の船長トゥルセス・ガリルの航海日誌である。
第二紀572年、恵雨の月19日
快適な強風と穏やかな海でネクロムを出る。目的地はマークマイアのリルモス。新しいアルゴニアンの同盟者のため、武器と防具の積荷をたっぷりと積んだ。栽培の月までに港に着けることを願う。
第二紀572年、恵雨の月20日
快晴が続いている。乗組員がデシャーン沖に数隻のアルゴニアン漁船を発見。友好を示す笑顔を交わした。とにかく、私は彼らが笑顔をしていたと思う。
第二紀572年、恵雨の月21日
ブラック・マーシュから奇妙な霧が出てきている。緑がかっていて、異臭がする。霧の外へ出るため、船を沖の方へ移動させることにした。
第二紀572年、恵雨の月22日
霧は止むことなく、我々はまだ霧の外に到達していない。深い海域に放り出されるのを恐れて、南西の方角へ戻るよう乗組員に命じた。海岸線が見えることを期待しよう。
第二紀572年、恵雨の月23日
霧はまだ止まない。乗組員に命じてはしけを二隻放たせた。親船に結びつけ、しかし東と西に12ヤードまで移動できるよう緩めさせた。狙いは岩礁や岩の多い海岸線に突然行き当たった時、船体の損傷を回避できるようにすることだ。乗組員は4時間交代制ではしけに乗り込む。
恵雨の月24日
霧は止まず、現在位置はまったくわからなくなった。星もよく見えないため、正確な方角を定められない。
恵雨の月25日
船員を1人失った。西のはしけに乗っていた。まだ若い少年だった。ウヴレン・ファラム。父親が知り合いだった。彼の叫び声が聞こえたと船員は言う。はしけのシフトは誰も続けたがらなかったが、斥候がいなければ岩礁や砂州に座礁する危険がある。私がはしけの仕事に志願しよう。これで残りの船員もやる気を出してくれるといいのだが。
恵雨の月26日
西のはしけでのシフトの最中、霧の向こうに星が見えたように思った。ほんの一瞬だったので、目の迷いだった可能性も捨てきれない。だがあの時見えたものは… あんな星は見たことがない。
恵雨の月27日
船は何かの海流に捕まった。海流の勢いは凄まじく、船は突然海上を引きずられていくようだった。海流で切り離される前に、はしけの斥候を連れ戻せたのはよかった。この海流がどこに向かっているのかはわからない。切り立った崖ではなく、視界の開けた海域であってくれと願う。とにかく、船員は調理場に避難させ、最悪の事態になった時のため、船を衝撃に備えさせておく。
28日
海流は同じところを回っている。最初はよくわからなかったが、時間が過ぎるごとに、我々が何かの渦に巻き込まれていることがはっきりした。だがそうだとすれば、こんなものは見たことがない。この渦はとてつもなく大きいはずだ。考えられないほどに。
追記
船が軋んでいる。渦が支柱や鋲を痛めつけている。しかも嵐がこの船に向かってきているようだ。皆が恐怖している。とにかく回転が止まって欲しい。どうか、止めてくれ。
漂流1日目
起きたことをなるべく思い出そう。調理室に逃げ込むと大きな、雷鳴のような軋みが聞こえた。二等航海士はマストが二つに折れた音だと思った。その後は海のしぶきと砕ける木、叫び声の不協和音だ。私は気絶したのだろう。我々は船の残骸に囲まれて、海辺で目を覚ました。私が率いていた20人の乗組員のうち、見つかったのは7人だった。他の者たちは助からなかっただろうと思うが、まだ死体は見つかっていない。
現在地はまだわかっていない。植物が密集している。これまで見たどのジャングルにも似ていない。海辺を離れるのは危険だが、近いうちに物資が見つからなければ、食料を探しにジャングルへ入っていくしかないだろう。
漂流5日目
ここの虫は巨大だ。ダートウィングが大人のスクリブほどもある。そして獣はありえないほど大きい。鱗を生やした化け物だ。トカゲは丘ぐらいの大きさだ。今のところ、我々の存在を気にしてはいないようだが、このままでいてもらいたい。
漂流7日目
物資はほぼ底を尽きたが、食べられる植物は見当たらない。比較的小さなトカゲの怪物を狩ろうという話も出たが、群れを怒らせるかもしれない。
漂流12日目
ヴェナサ・オリルがある妙な木の陰で叫んでいるのを発見した。樹液を飲もうとしたらしい。話し合ったが… いや、彼女は埋めよう。海辺の近くに。
***
だが、それが何になる?
もう何週間も海辺沿いを歩いて、集落か我々の船の残骸を探してきた。大型の虫はそれなりの食糧になったが、一日ごとに弱っていくのを感じる。
***
皆いなくなった。彼らの名前を思い出すのにも苦労する。諦めるわけにはいかない。彼らのためにも。
***
地平線がない。石だけだ。アズラの星よ。地下? 我々はずっと地下にいたのか?
コメント