スポンサーリンク
書籍

神聖なアルマレクシアの朝の寓話

一番背の高いシュルームビートル

背の低さを不満に思っていたシュルームビートルが、大きなキノコのてっぺんまで登っていきました。ビートルはアッシュランドを見渡して叫びました。「どうだ! 俺よりも背の高いシュルームビートルはいないぞ! 見えないものなんて何もない!」

するとクリフ・レーサーが急降下してきて、ビートルを止まり木から引っ張りだしてしまいました。この獣は歯をいっぱいに見せてにやっと笑い、言いました。「地面に留まっていれば、俺はお前を見ることもなかっただろう。背が低くたって、死ぬよりはマシじゃないか?」

かわいそうなビートルは、本来の性質を捨てても身を滅ぼすだけだと学びましたが、遅すぎました。

* * *
2人のグアル飼いの物語

2人のグアル飼いが家畜を売ろうとして、市場で出会いました。2人のうち背の低い方は、もう1人を見て笑い、こう言ってからかいました。「市場にたった1頭のグアルしか連れてこなかったのか? 私の群れを見なさい! 10と20頭も連れてきた。大金持ちになるんだ!」

背の高いグアル飼いは頭を横に振りました。「あなたは10と20頭のグアルを持っているが、どれも痩せこけていて弱々しい。丈夫なのを1頭持っている方が、病気のグアルを100頭持つよりもいい」

背の低いグアル飼いは下品にくすくすと笑い、自分の獣たちを囲いの中に誘導する準備をしていました。すると、大きな灰の嵐がやってきて、市場はものすごい風と息の詰まる煙に襲われました。

そのうちに嵐は収まりました。背の高いグアル飼いと彼の大きくて強いグアルは無傷でしたが、背の低いグアル飼いのグアルたちはあちこちに吹き飛ばされ、1頭たりとも生き残ってはいませんでした。

「友よ、これでわかるだろう」と背の高いグアル飼いは言いました。「数は質の代わりにならないことが」

* * *
友達が欲しかったアリット

陽気なアリットがアッシュランド中を跳ね回り、「友達」と呼べるような獣はいないかと目を凝らしていました。しばらくすると、灰の穴の中で毛づくろいをしているニックスハウンドが現れました。アリットは大きく笑顔になり、「こんにちは!」と叫びました。ニックスハウンドはアリットの大きな歯を見て取り乱し、岩の下まで走って逃げてしまいました。アリットはため息をついて、そのまま跳ねていきました。

道の途中、ビートルの巣を掘り返しているヴァルドヴァークに出会いました。「やあ!」とアリットは叫び、笑顔でいっぱいになって、その大きく鋭い歯を見せました。ヴァルドヴァークは恐怖でキーキー声をあげて、茂みに走り去っていきました。アリットはまた悲しげなため息をつき、海辺へ向かってゆっくりと進んでいきました。

ようやく、アリットは砂の中で転がっているアッシュホッパーを見つけました。アリットは一番大きく元気のよい笑顔を作り、言いました。「こんにちは、アッシュホッパーさん!」アッシュホッパーは恐怖で後ろに飛びのき、全速力で逃げていきました。

アリットはすっかり挫けてしまいました。「このひどい歯がある限り、友達なんてできるわけがない!」アリットは怒ってシューと音をたてました。歯を全部なくしてしまう決意を固めたのです。アリットは大きな岩を口の中に入れ、思いきり噛みました。緩んだネジのように、歯が全部抜けてしまいました。アリットはため息をつきました。「これでもう、他の獣たちが怖がることもなくなった!」

すると大きなカゴーティが現れて、足を踏み鳴らして襲いかかろうとしてきました。アリットは唸り声をあげ、顎を思いきり開いて追い払おうとしましたが、カゴーティは笑いました。「馬鹿だな! 歯が1本も残っていないじゃないか!」アリットが自分の過ちに気づいた時には遅すぎました。カゴーティは突進して、陽気な獣をひと息に飲み込んでしまいました。

そうなのです。自分の内にある嫌いなものが、とても大切なものであることは、よくあることなのです。

* * *
ヴィベクと萎えた手の者

ヴィベク卿が道を歩いていると、ねじれてしぼんだ頭の者に出くわしました。「そこの若いの!」と彼は叫びました。「誓約者を助ける気はないか?」

ヴィベクは立ち止まり、ひたいにしわを寄せました。「どうしたのだ、老エルフ?」とヴィベクは尋ねました。
彼は手を挙げて答えました。「わしの萎えた手が見えんのかね? 古い根っこみたいにねじ曲がっちまって、嵐が来るたびにひどく痛むのさ。こいつが醜いもんだから、女はわしに近寄ろうともせんし、子供は見ただけで逃げちまう。お慈悲を頼むよ!」

ヴィベクは少しの間、静かに立ちつくしていました。それから光り輝く剣を抜き、老エルフの手を一撃で切り落としてしまいました。彼は痛みで泣き叫び、戦詩人は傷口を手当てしました。

「そんなにわめかなくてもいい」とヴィベクは言いました。「私のしたことが最も親切な行いだったのがわからないのか? 憐れみを買うために悪を持ち続けるよりも、きっぱりと別れてしまったほうがいい」

コメント

スポンサーリンク