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タネスの女王の秘密の主、タモニール著
はじめてアバーズ・ランディングの貿易会社ができた頃、他から突出した会社があった。
リーダーが変わっているだけでなく、そのリーダーが選んだ業種もまた異質だった。
サザール・ラと名乗るカジートが設立したサザール・カルテルは、卑劣でありながら欠くことのできない、港町での奴隷貿易を商売にした。
男性の敬称「ラ」を授かった、カジートの歴史の中でも数少ない女性であるサザール・ラは、帝国人、ブレトン、レッドガード、そして少数のカジートから成るカルテルを作り上げた。
カジートに奴隷商売のカルテルが運営できるのか?と疑問に思うかもしれないが、結果から言うとかなり上手にできている。
利益次第では我が子をも売りさばく女、サザール・ラの伝説は、カルテルの富の増加とともに広まっていった。
遠い国へ向かう途中のアルゴニアンやカジートの奴隷を仲介するかたわらで、カルテルは密輸や情報の売買にも事業を拡大した。
同族を売り飛ばすことにも躊躇のないカルテルは非常に危険な存在だ。
時が経つにつれ、競合者たちもそれを思い知ることとなった。
今は6代目となるカジート女性サザール・ゴールドファングがサザール・カルテルの商人王となっている。
彼女はアバーズ・ランディングの貿易会社の現状にも、自身の事業の現状にも満足しておらず、落ち着きをなくしているように見える。
貿易会社を害した何かは、このカルテルには特に大きな打撃を与えたようだ。
彼女は「隠れた貿易会社」の活動以前に誇った権力と名声を取り戻し、先祖と同じ栄誉ある敬称を受け継ぐことを切望している。
サザール・ゴールドファングは怒りと野心で煮えたぎっている。
本人は自分がアバーズ・ランディングで一定程度の富と敬意を手にするのは当然のことだと考えているが、率直に言ってそれは難しい。
そのため彼女は苛立ち、不安をかかえ、かなり危険である。
私の忠告を聞くか?
あのカジート奴隷商人には近づくな。10フィート圏内にもな。
(メモ:この報告書はタネスの船舶から「回収」され、アバーズ・ランディングの関係者に届けられたものである。
湾の向こうの親戚たちが我々のことをどう思っているのか皆に知ってもらうために公開した――匿名)
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