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書籍

アバーズ・ランディングの商人王 第3巻

タネスの女王の秘密の主、タモニール著

必然的なことだった。
悪徳と腐敗に満ちたアバーズ・ランディングには欲を満たす主人、いや女主人が必要だった。
腐敗と道楽の渦巻く港町に自分の居場所を築こうと、威厳と大樽一杯の金を手にウェイレストからアバーズ・ランディングへとやってきたのがレディ・フェリス・ヴィエンだった。
彼女がやって来たいきさつについてはほとんど情報が残っていないが、ウェイレストの著名な貴族であった夫と、その死との関わりが原因であったことは突き止めることができた。

アバーズ・ランディングに来た理由が何であれ、レディ・フェリスはすぐさま土地を購入し、酒場兼宿屋ウィンサム・ウェルワを設立して港の話題を呼んだ。
はじめは小さな宴会場だったが、やがて他の娯楽、より合法性の低い娯楽も提供するようになった。
レディ・フェリスはアバーズ・ランディングを通り抜ける人々が持つ悪習に目をつけ、その欲を満たすことができれば金が稼げると考えたのだった。

ヴィエン家は現在、違法薬物や売春といったアバーズ・ランディングの私的で隠された欲を満たしている。
ハイロックの悪名高きチェイストハーピーを真似たウィンサム・ウェルワは売春宿となっており、現在の当主レディ・イレニー・モンテインの本拠でもある。
他の貿易会社と同じように災難に見舞われながら、彼女は海賊や商人団、多少の冒険を求める貴族の訪問者の違法な需要を満たすことで、ささやかながら利益をあげ続けている。
ヴィエン家の商売は全てレディの鋭い監視の下で、アバーズ・ランディングに集中している。
街を歩く彼女は、上品で優雅な態度で顧客や訪問中の貴人と接する。
しかし暴力的、殺人的ともいえるほど気が短い――不幸にも彼女のそういった一面を見てしまった者で、それを生きて語り継げる者は少ない。

性行為や薬物と同じように、秘められた情報もレディ・イレニーの商売道具である。
絶対に裏切らず、彼女が提供する快楽に関わらないのであれば、目的達成の心強い味方となるかもしれない。

(メモ:この報告書はタネスの船舶から「回収」され、アバーズ・ランディングの関係者に届けられたものである。
湾の向こうの親戚たちが我々のことをどう思っているのか皆に知ってもらうために公開した――匿名)

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